いやーーーー。押見修造のフィーリングはすごく合う。
『惡の華』『ぼくは麻理のなか』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は全部読んで、『血の轍』『ハピネス』は途中で買うのやめちゃったけど(勿論面白い)、押見修造はやっぱり今いちばん好きと言える漫画家さんの一人。
んで、短編の三作品。どれも起伏がない。
これだ。こういう読み切りをオレは読みたかった!!!!
起伏がないから、行間を読むことが楽しめる。感情を誘導させるような漫画ではない。ただ、自分の描きたい心象風景を描いてる。
とにかく押見先生はミステリアス。そして突拍子がない。「えっこのオチは…」と思わされて「行間を読む」ことを強いられる。素晴らしい。これぞ僕が読みたい漫画だ。僕はやっぱり押見修造先生が好きだ。
比べてけなすつもりは毛頭ないが、藤本タツキ先生の短編集も買ったけど、脳にスルリと内容が入ってこない。
僕の好きな漫画短編集は松本大洋「青い春」だけど。こういう系が好きなんだな、僕は。
押見先生の短編は情報量がものすごく低い。それこそが押見節と言えるというか。
『真夜中のパラノイアスター』
ボンクラの本質は自己嫌悪にある。
「大いなる力には大いなる責任を伴う」・・・はずが自滅する。そ
の大いなる力に対する器のなさがこの漫画の主人公にある。
責任をごまかし続けてたけど、最後にそれが明らかになって、自滅する。「荒んだ心に、武器は危険なんです!」
『日下部さん』
押見修造の最も理想の女の形が描きたいくらいに描かれている。「美女と全裸で同棲したい」というこの衝動。それだけがこの漫画を描いた目的とすぐに分かる。
ボンクラさ。垢抜けない童貞臭さを日下部さんは主人公に求めている話。
それだけを、これだけポエトリーに。説明もなしに、雰囲気だけで描けるのは良い。
『ワルツ』
これは難解だった。
押見先生のセクシャル像は、ミステリアスでS気のある女とマゾ男。いかんなく今作も発揮されてる。
ヒロインは女装少年に己の求めていたものを当て嵌めていたという話だが。
これを素直に描かない。伝わりにくいように、ミステリアスに描く。これが僕の好きなマンガのスタイルだ。
ほんの数ページでプラトニックな恋とトキメキを描けてしまう。これは一番おもしろいな。