もう銘作漫画のひとつとして数えられているから、ネタバレもくそもないと思うが、未読の方にはとりあえずご注意を。
社会主義的思想を持つラスボス
ラスボスとは、主人公に立ちはだかる何らかの思想を持ち、それが「個人主義」か「社会主義」の二択に別れる。
まずわかりやすく。『ジョジョの奇妙な冒険』の変遷をみると、各部のラスボスは、第五部ディアボロにおけるまで全員が個人主義者だった。
頂点は常に一人ッ!
・・・しかし、六部のプッチ神父から趣向が変わる。
DIOに陶酔し、神父の肩書もあって、カテキズムも持ち合わせている、社会主義者エンリコ・プッチ。
その「社会主義思想」。「天国」を実現するための計画を建てて、彼はラスボスとして立ちはだかる。
そしてプッチの最期は周知の通りだ。
社会主義者なので、最期はエンポリオに、命乞いというよりは、「社会主義的計画」だけは実現させてくれと必死にせがむ。
しかし、エンポリオに聞き入れられず頭部を潰され、プッチの計画は崩壊した。
似たような例が同じくジャンプ漫画にある。
『DEATH NOTE』 夜神月。
彼もプッチ神父のごとく、計画的な社会主義思想を持つが、最終的に追い詰められる。
あらゆる手立てを失い、最期は対立するSPKと日本警察捜査本部に自分の理想の社会を説き、説得することを最終手段に敢行する。
しかし説得に失敗。最期の最期にリュークに命乞いをするが聞き入れられず、心臓麻痺にて計画ごと敗れ去る。
―このように、社会主義者のラスボスは、最終手段として「言葉による説得」が残されている。
ほかに言えば、『グレンラガン』のアンチスパイラルの最期。この場合は主人公シモンに聞き入れられる形となったが。「ならばこの宇宙、必ず守れよ」と「計画」への最終手段は武力でなく、言葉だった。
探せば他にも枚挙に暇はない。
彼の「ジパング計画」が瓦解し。最終手段として、死に際に主人公・角松に言葉で計画の続きを託す。
その言葉が聞き入れられたかどうかは、読者の判断に委ねられる形となったが。
社会主義者なラスボスは、「言葉」を遺せられる。
私は個人主義者のラスボスより、社会主義的傾向を持つラスボスが好きだ。