大草原の小さな寒村

孤独に歩め。悪をなさず。求めるところは少なく。林の中の象のように。

僕たちにはもうタイラー・ダーデンはいらない「グリーンブック」

こないだ午後ローで再び観て、やっぱ良いよなぁーこの映画と、しみじみ。

グリーンブックは、とにかく健全なホモソーシャル映画だ。

バディものは、だいたい妙にマチズモに基づいてカッコつけてるパターンが多い。

同じロードムービーの文脈だと、「ノッキンオンヘブンズドア」みたいな男同士のマチズモな雰囲気。

しかし、トニーとドンの二人だけの車内では、トニーがいくらカッコツケても、ドンの冷静さにスルーされる。

ドンの芯には冷徹な品位がある。マチズモに基づく品位ではない。正しい倫理観だ。

ドンは徐々にトニーのノリに合ってくるが、心の底では冷徹な品位を曲げない。

かなり異色なバディものだと思う。

この映画で説かれる「品位」は、過激派マチズモ・タイラーダーデンが解くようなろくでもない教義はない。

トニーは、静かに、健全に変わっていく。

「ポリコレ映画かよ」と捨てずに、この映画は万人に観てほしい。

なにせ、この映画のポリコレは、崇高な品位にもとづいているのだから。